【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
思わず、「うっ……」と口元を押さえる。
まだ食べている最中だった部員たちも、同じようにしていた。
「おい、これくそ不味いんだけど……」
「どうなってんの?今日の朝飯までは美味かったのに……」
……ああ、やっぱり任せるんじゃなかった……。
部員たちへの申し訳なさから、俺はその場にしゃがみ込んで頭を抱えた。
マネージャーは部員を支えることが仕事なのに、何をやっているんだろう。
臨時で来てくれた静香さん頼りになっている時点で、サッカー部のマネージャーはちゃんと機能していなかったんだ。
情けない……心底、自分が。
「つーか静香先輩が寝込んだらしいぞ」
「それって、今まで全部静香先輩が作ってたってこと?」
「え?あの量をひとりで?流石に無理だろ〜」
「じゃあ今日の晩飯なんでこんな不味いんだよ」
こそこそと、マネージャーに聞こえない声量で話している部員の会話が聞こえる。