【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「静香ちゃん、休むようにって言われなかった?」
沈黙を破るように、キャプテンが静香さんにそう言った。
「あ……す、すみません、たまたま通りすがって……」
通りすがってって……多分、心配で見に来てくれたんだろう。
キャプテンが、まるで毒気を抜かれたようにため息を吐いた。
「……静香ちゃんは明日も休んでて。柴原、お前が指示出してあげてね」
その言葉に、マネージャーたちが目を輝かせた。
でも、一番嬉しそうなのは紛れもない静香さんだった。
……俺が静香さんなら、かばうなんてことしないで、陰で嘲笑ってやるけどな。
どうやったらこんなにお人好しな人が育つんだろう……。
「今度サボったら、退員してもらうからね」
キャプテンは、呆れた表情でマネージャーたちにそう言った。
まだ許す気はないみたいだけど、これ以上何か言う気もないだろう。