嘘の続きは
「LARGOって言えば、お姉さんと同じ事務所じゃないの?大丈夫かしら、このお相手の女の子」
芸能界にちょっと詳しい沢田さんが顔をあげた。

「秋野さん、LARGOのことは知ってる?」

「うーん、LARGOのメンバーには何年か前に事務所の社長交代のお披露目パーティーで私も一度だけ見たことあります。タカトは畏れ多いって感じのかなりのイケメンでしたから騒ぎになる気持ちもわからないではないですけど」

「ホントに芸能人って大変だね。でもそれを含めて自分自身が選んだ職業なのかもしれないけど。ただ、プライベートは必要だと思う」

それぞれが頷いたり、気の毒そうな表情をしてスマホの記事を見ていた。

その空気を換えたのは沢田さんだった。

「私、ギターのタカトよりボーカルの子の方が好き。あの目が可愛いのよね。ああいう子に上目遣いでお願いされたら何でも買ってあげたくなるわ~」

どうやらアラフォー沢田さんの好みはボーカルのユウキみたいな甘い王子様のようで、両手を組んで夢見る少女の顔になっている。
もしかしたら貢いじゃうタイプなんだろうか。

「お姉さま、どうか僕に新しいパソコンを買ってくださいませんか」
空気を読んだ松下君がキラキラと瞳を輝かせて沢田さんの足元に跪いた。

「はぁ?そんなもの買わないわよ。自分のものは自分で買いなさいよ」
「沢田さん、冷たい・・・」
「鏡見てからもう一度いらっしゃい」
にこっとしながら毒を吐いた沢田さんと松下君のじゃれ合いもいつものこと。

この人たちの前ではこうして真紀の話も普通にできている。
イイ感じに話がそれて必要以上に突っ込まれることがない。
私が素の自分を出すことができる貴重な場所。それがここだ。
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