マリッジリング〜絶対に、渡さない〜


「泣くなって」
「だって…」
「ずっと、家事も育児も亜紀に任せっぱなしだったし。これは本当にこの十年の俺からの感謝の気持ちを込めて渡したものだから。なっ?」


大地はそう言うと私の手からネックレスを奪い、ぎこちない手つきでそっと首につけてくれた。

次々に浮かんでくる涙を拭いながら大地の左手を掴んだ私はその手を両手でぎゅっと包み込んだ。


「ありがとう、大地」
「おう。亜紀も…ありがとな。まだ十年、これからの方が夫婦生活長いだろうから。これからもよろしくお願いします」

そう言って照れくさそうに笑った大地に、私も思わず笑ってしまった。

この人と結婚して良かったと思った。
これからも、大地のそばで年を重ねていきたいと改めて感じた。

ずっとこんな普通の毎日が、続いていけばいい。

そのためには、私も大地をもっともっと大切にしていかなきゃな…と、テレビを見ながら考えていたその時。

週間芸能ニュースというバラエティ番組が始まり、ここ最近の芸能人のアレコレが放送されると、それを見ていた私の口からは呆れたようにため息がこぼれた。
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