【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました

この事後感ただよう甘ったるい空気。

「〝おかわり〟ってことは、昨日わたしたち……」

「覚えてないの?」

彼が不機嫌そうに、目をすがめた。

いや、覚えていないということはない。かすかに残る記憶を必死にたぐり寄せる。

わたしの肌の上を優しくさまよう手。

絡み合う足。柔らかいけれど情熱的な唇。そして……とろけるようなささやき。

『俺なら大事にしますよ。めいいっぱい大切にします』

記憶を呼び覚ました体に、ときめきと喜びが湧き上がる。

間違いなく、わたしは昨日この男に抱かれた。

確信を得たわたしに彼は「思い出したんだ」とうれしそうに笑った。

しかしわたしは……。

ぎゅっと目をつむり〝やってしまった〟と思う。

この歳になってお持ち帰りされるなんて……いや、お持ち帰りしたのか……な? え、どっち?

動転しているせいで、どうでもいいことばかりを考えていたわたしの頬がなでられた。

その瞬間目を開くと、ケイトの誘うような視線に絡め取られる。

手の甲でわたしの頬に触れ、その後大きな手の平で髪をなでる。

気持ちいい。やさしくてあったかいこの朝に身を任せたい。

しかしわたしは誘惑に負けるわけにはいかない。

「どうかした?」

わたしのほんの少しの変化に気がついたのか、顔をのぞき込もうとしてくる。

しかし後ろにひいて、距離をとった。

相手のペースに巻き込まれないようにしないと。
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