【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
「こっち、ここあいてますよ」
ベンチにわたしを座らせると、その前にかがんでシューズを脱がせてくれる。
「大丈夫、そのくらい自分でできるから」
慌てて手を伸ばすと、ペちっと叩かれた。
「いいから、俺がしてあげたいんです」
「ん、ありがとう」
こういうとき、素直に受け入れられないのが今の自分だ。
何でもかんでもひとりでやってきた。それで困ったことなんてひとつもなかった。
仕事も安定しているし、お給料もそこそこもらえている。
欲しい物だって自分で買うことが出来るし、食べたいものも、行きたいところも思いのままだ。
けれどケイトといると、いままでひとりでやってきたことがより楽しくなる。
これまでの自分がいやに色あせて見えた。
ぺたんこのバレエシューズをシンデレラのガラスの靴かのように履かせてくれた。
「できた。行きましょう」
特設のスケートリンクを出て、ふらふらと歩く。
気がつけばケイトにつながれていたわたしの手は彼のダウンジャケットのポケットに一緒に入れられている。
この間もそうだった。彼は自然にこういうところをやってのける。
無理矢理出すこともできるはずなのに、その手の温かさが心地良くてそのままにした。
「なにか暖かいもの食べたい」
ケイトが鼻をすする。
「同感! 寒い~」
そんなふたりの前に【おでん】の看板が現れた。
ふたり同時に顔を見合わせて「行こう!」と声を上げて小走りに向かった。