濡れた月の唄う夜
「え、嘘…」
嘘、という言葉を聞いても、クロスはただ寂しそうに笑っているだけだった。
「クロス…?」
「吸血鬼、って知ってる?」
私は、黒いマントを着た黒髪の牙の生えた男を想像した。
十字架に弱くて、日光の下では生きられなくて、人間の生き血を吸う。想像上の人物を。
「人の血を、吸うの…?」
「うん」
「うそ、だって、日光の下で笑ってるじゃない」
だけれど、日光に透ける茶色の髪も、色素の薄い肌も、確かにこの世界のものでは無いような気がしていた。
むしろ、それは吸血鬼ではなく、もっと、神秘的な、天使の様な存在なら頷けるのに。
「それは、理由があるんだ。ある時が来たら、僕は夜の世界でしか生きられなくなる」
「それって、私はどうなっちゃうの?まさか…置いてけぼり?」
膝の上に置いていた手の甲に、温かいものが触れた。
見れば、それは私の目から溢れた涙だった。
「羽織」
隣に並んで座っていたクロスが、目の前に座る。
「羽織、僕と、一緒に居てくれる?僕と、夜の世界で生きてくれる?」
真剣な表情を縁取る茶色の髪が、微かに震えていた。
私の手を握った大きな手も、冷えている。
私は、この手を守りたいと思っていた。
私は、大きく頷いた。
「…うん。…きゃっ」
クロスは、突然私を抱きしめた。
カーディガン越しに、クロスの心臓の音がする。
私はきっと、耳まで赤くなっている。
「これって、プロポーズ…なのかな。羽織、本当に、いいの」
クロスは、私を抱きしめたまま、呟いた。
「ぷ、プロポーズ…?わたし、プロポーズ、されたのかな」
信じられないけど、どうやら、プロポーズの意味が込められていたらしい。
「羽織」
「ん…?」
クロスの腕の中で上を見ると、クロスは微笑んでいた。
「ありがとう」
微笑むその顔はやはり吸血鬼ではなく、天使だった。
「…愛してる…」
嘘、という言葉を聞いても、クロスはただ寂しそうに笑っているだけだった。
「クロス…?」
「吸血鬼、って知ってる?」
私は、黒いマントを着た黒髪の牙の生えた男を想像した。
十字架に弱くて、日光の下では生きられなくて、人間の生き血を吸う。想像上の人物を。
「人の血を、吸うの…?」
「うん」
「うそ、だって、日光の下で笑ってるじゃない」
だけれど、日光に透ける茶色の髪も、色素の薄い肌も、確かにこの世界のものでは無いような気がしていた。
むしろ、それは吸血鬼ではなく、もっと、神秘的な、天使の様な存在なら頷けるのに。
「それは、理由があるんだ。ある時が来たら、僕は夜の世界でしか生きられなくなる」
「それって、私はどうなっちゃうの?まさか…置いてけぼり?」
膝の上に置いていた手の甲に、温かいものが触れた。
見れば、それは私の目から溢れた涙だった。
「羽織」
隣に並んで座っていたクロスが、目の前に座る。
「羽織、僕と、一緒に居てくれる?僕と、夜の世界で生きてくれる?」
真剣な表情を縁取る茶色の髪が、微かに震えていた。
私の手を握った大きな手も、冷えている。
私は、この手を守りたいと思っていた。
私は、大きく頷いた。
「…うん。…きゃっ」
クロスは、突然私を抱きしめた。
カーディガン越しに、クロスの心臓の音がする。
私はきっと、耳まで赤くなっている。
「これって、プロポーズ…なのかな。羽織、本当に、いいの」
クロスは、私を抱きしめたまま、呟いた。
「ぷ、プロポーズ…?わたし、プロポーズ、されたのかな」
信じられないけど、どうやら、プロポーズの意味が込められていたらしい。
「羽織」
「ん…?」
クロスの腕の中で上を見ると、クロスは微笑んでいた。
「ありがとう」
微笑むその顔はやはり吸血鬼ではなく、天使だった。
「…愛してる…」