懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
「そ、そんなっ!?」

目玉が飛び出しそうなほどに驚いているイブシゲルは、慌てて立ち上がると、喚くように反論しようとする。


「あまりにもご無体な仕打ちではありませんか! 私は侯爵様のーー」

「ええい、黙れ黙れ、この悪党め!」


イブシゲルの叫びを、それよりも大きな声で遮った侯爵は、間髪入れずに護衛兵に命じる。

「工場経営者とその一味を、全員ひっ捕らえよ!」


たちまち辺りは騒がしくなる。

逃げようとする工場の男たちを、護衛兵が追いかけ捕らえて、怒声や叫び声で耳を塞ぎたくなるほどだ。

拘束されて連れていかれるイブシゲルも、必死になにかを叫んでいるが、騒ぎの中ではその声を、聞き分けることができなかった。


「三つめのミッション、クリアだね!」

夜空に伸び上がったラナが、スッキリした顔で笑う。

そんな彼女にカイザーは、「お前には冷や冷やさせられたけどな」と不満をぶつけた。

けれども彼の口角も上がっていて、一件落着とばかりに気を緩めているようだ。


グリゴリーは赤絨毯を丸めて後片付けに入り、オルガは交易台帳を開いて興味深げに読み耽っている。

そのように、すっかり問題は解決したという空気が流れている中、なぜかイワノフだけは、また難しい顔をしていた。


「王家の紋章を見せつけるのが、早かったかの……」


アダモビッチ侯爵は、建物の玄関の方へと歩きながら、護衛兵に指示を出している。

それを目で追いながら、賢者はボソリと呟いたのであった。

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