懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
淡々とした声の返事には、やけに畏まった敬礼まで付いている。

姿勢を正した彼は、なおもラナと視線を合わせようとせず、ドアを睨むように見据えているだけであった。

その態度はまるで、二度と親しげに話しかけるなと言わんばかりである。


しかし、そのように心の距離を置かれても、『もう、じゃれ合うことはできないのね……』と悲嘆するラナではなかった。


(そっちがその気なら、実力行使よ。絶対に、こっちを向かせてみせるんだから……!)


ムッとした彼女は椅子を離れると、カイザーの正面に立って、無理やり視界に入ろうとする。

けれども上や横を向く彼に、かわされてしまい、視線を合わせることができない。

騎士の前でピョンピョンと飛び跳ね、時にフェイントをかけて左右に動く女王は、はたから見れば滑稽であるが、ふたりは至って真剣である。


「カイザー、いい加減にこっち見なさいよ!」

「自分はただの護衛です。どうぞお構いなく!」


重たいドレスで俊敏に動けば、ラナの息が切れてきた。

「もう怒ったわよ……」と呟いた彼女は、背伸びをすると、両手でカイザーの頬を挟むように掴む。

その手に力を込め、彼の顔を引き寄せると、額を合わせた。

これにはカイザーも慌てて、「ば、馬鹿、やめろ!」とつい軽口を叩いてしまう。
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