こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
眉間に皺を寄せると、最上さんがいきなりその封書をまっぷたつに引きちぎった。そしてその手の中でどんどん小さくなって紙屑になると、最上さんはそれをゴミ箱へ捨てた。

「あの、最上さん……いったいどう言う――」

困惑する木崎課長に最上さんが言い放つ。

「お前、自分のやったこと、ただ謝ればいいと思ってるんじゃないだろうな? 冗談じゃない、そんな勝手が許されるか」

パンパンと手のひらにくっついた紙屑を叩くと、最上さんが木崎課長を睨む。

「知ってるか? お前が推奨した会社は必ず契約が取れるって営業部でもっぱらの噂だぞ。部署は違っても社員の信用を裏切るようなことはするな。お前が裏でなにをしていたかを知ってる社員は幸いまだいないようだからな。木崎、逃げるんじゃなくてちゃんと会社に落とし前つけろ。じゃなきゃ、お前の退職届は受理できない」

すると、木崎課長は咄嗟に漏れ出そうになった嗚咽を手で押さえ込み、肩を震わせた。

「……はい、はい。もし、もう一度チャンスを頂けるなら、御の字です」

こんな木崎課長を初めて見た。以前はどことなく人間臭さを感じなかったのに、今私の目の前にいるのは、おいおいと泣き崩れる平凡な男だった。
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