Green Apple

(ん………?どこだ?ここは…)


どうやら気を失っていたらしい。

保健室のベッドか何かだろう、カーテンのようなもので覆われているのが分かる。

外の地獄の暑さとは真逆でとても涼しい。

トイレでも行こうか、と思い起き上がろうとすると、
覆われていたカーテンが少し開いた。


「あっ、大丈夫ですか?」


俺は目を見開いた。

なぜなら、目の前にいる人がなんと山内だからだ。

保健委員…として、心配してくれるのは嬉しすぎる。

あの山内に。


「あの、一応体温計を…。」

山内に渡され、俺は体温計を測る。

「あとこれも…。」

そういえば既に冷んやりとはしていなかったが、おでこに冷えピタが貼ってある。


「私が、やりますね。」


なぜに敬語なんだろう。


そしてちょっと待った。

冷えピタ交換をする今、今この瞬間がたまらなく幸せだ。

ベッドに座ったままの俺。

立ったままの山内が俺のおでこに貼ってある冷えピタを剥がした。


俺の目の前には胸元が。

とてもいいにおいがする。

冷えピタを剥がして腕を降ろす時、

新しい冷えピタをまたつけようとする時、

腕や手が動くたびにいいにおいがする。


動くたびににおいセンサーがどうのこうの……といっていた、柔軟剤のCMって本当だったんだな、と思った。


胸がドキドキして鳴り止まない。


だが落ち着こう。冷静に、冷静に…。

そこで俺は思い切って聞いてみた。ノリっぽく。

「こんなことしてたら彼氏がやきもち焼くぞー。」

「…………。」


(…あれ?反応なし?)

「……なーんちゃって。」

とすぐ付け加えて、とりあえずごまかす。

「…もう付き合ってないよ。」

(………!!!!!)

「えっ!マジ!?なんで!?」

俺は1と数える間も無く反応した。



「…他に好きな人がいるから。」

ドクッ、と心臓が深く鳴った。

「…………誰?」

山内は目線を下にずらした。

そしてふぅ、と小さく深呼吸をして、

真っ直ぐ俺を見つめる。



「今目の前にいる人。」
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