真実(まこと)の愛

空腹が満たされたあと、麻琴はヱビスからキープしているボウモア十二年のロックに移った。
ずっとオリオンドラフトだった守永も「呑んでみたい」というので同じものを頼む。

しかし、彼はその琥珀色の香りを嗅いで、表面をぺろっと舐めたかと思うと、
「なんだ、この正露丸みたいな臭いと味は?」
と言って鼻白んだ。
どうやら、ピートの(かぐわ)しさが理解できないようだ。

「じゃあ……カクテルにします?
杉山くんはこの若さで、すでに世界的なコンテストでも優勝していて腕は確かですよ」

麻琴がくすっと笑いながら「提案」すると、

「じゃあ……ギムレットで」

守永が杉山に告げた。

「かしこまりました」

杉山はそう応じて、バックバーからジンのボトルを取った。


……確かギムレットのカクテル言葉って、
「遠い人を思う」だったわよね?

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