真実(まこと)の愛
「なぁ、麻琴、初めっから中身とフレームが固定されてるってのは、あたりまえ過ぎておもしろくないと思わないか?」
芝田の問いかけに、麻琴はチームミーティングで紗英が言っていたことを思い出す。
「でもね、うちの若い子がオシャレな中身とフレームの組み合わせがわからない、って言うのよ。サイズとか余白とのバランスとかもあるし。
だから、最初から額装してる方がいいって」
「だったらさ、同じ規格の中身とフレームを何種類かつくって、買う側が自由に組み合わせられる『選択肢』を用意すりゃいいんじゃないか?
最終的にその作品を『完成』させるのは『自分自身』だっていうふうに仕向けるのさ」
……なるほど。
「うちの奥さんなんか、きみと同じお嬢さん育ちだから、料理なんかさっぱりなんだけどさ」
……いやいやいや。今のわたしは、カフェや小料理屋がオープンできるくらいの腕前なんだけどね。
「子どものためにはさ、なるべく冷凍食品とかは使いたくないって言うんだけど、食材とソースがセットになって売ってるヤツあるだろ?」
……あ、なにか野菜を加えてつくる「中華名菜」とかね?
「結局はレトルトの一種なんだけど、それでもパックに入ってない野菜を切ったりとかフライパンで炒めたりとかして一手間かけることで、なんだか『料理した気分』になってるわけ。
まぁ、肝心のソースは商品開発部が日夜研究に研究を重ねた『渾身の味』だろうから、おれに文句はないけどね。
……あっ、妻の名誉のために言っとくけど、この春からは上の子どもが幼稚園に持っていくキャラ弁を早起きしてつくって、インスタにアゲてがんばってるぞ」
麻琴はふふっ、と笑った。
……幸せそうで、なによりです。