真実(まこと)の愛

「いきなりごめんなさいね。
わたし、Jubilee(ジュビリー)っていうジュエリーの会社でデザイナーをやってる久城 礼子です。
この前、(かける)くんがあなたを『渡辺さま』って呼んでたのを覚えていて、思わず声をおかけしてしまったわ」

彼女はそう言って婉然と微笑んだ。
そこは奥のテーブル席の中でもさらに奥まっていて、半個室のようになっていた。

「どうぞ、お掛けになって。
あなたとは一度、お話をしたかったの」

彼女が勧める真向かいのゆったりとしたソファに腰掛けながら、麻琴は苦笑した。

……わたしの方は、あなたとサシで話をする日が来るなんて、(おそ)れ多くて御免(ごめん)(こうむ)りたかったんですけれども。

「……渡辺 麻琴と申します。
恭介さんが非常勤の嘱託医をされてる(株)ステーショナリーネットでプロダクトデザイナーとして勤務しています」

すると、礼子は目を見開いた。

「あら、あなたもデザインのお仕事をなさってるのね?」

そして、なぜか大きく肯きながら、

「なるほど……過労死するんじゃないか、ってほど忙しい恭介が、最近産業医まで引き受けたって聞いてびっくりしてたんだけど。
……そう……そうだったのねぇ……」

一人で納得していた。

「『過労死する』くらい、恭介さんはお忙しいんですか?」

確かにあれだけの肩書きだから、忙しいのだろうとは思っていたが、それほどとは。

……わたしのこと、エラそうに言えないんじゃないの⁉︎

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