真実(まこと)の愛

「ねぇ、あなたは元カレと復縁したい派?」

「とっ、とんでもないっ!」

麻琴は目の前でぶんぶんぶんと手を振った。

「別れたということは、きっと二人の間に乗り越えられなかった『理由』があるはずです。
だから再度つき合ったとしても、うまくいくことの方がまれで、また同じことを繰り返す可能性の方が高いと思います。
それでなくても今月で三十四歳になるのに、そんな不毛な時間に労力を費やしている余裕は、わたしにはありません」

「あなた、ずいぶんはっきりと言う人なのね?
でも……確かにそのとおりだわ」

礼子はふふふ…と笑って、グラスの中の貴腐ワインを呑み干した。

麻琴もビアグラスのギネスをぐーっと呑んだ。
そして、思い切って訊いてみることにした。

「あの……恭介さんがイギリスに発つことになって、別れたんですよね?
ものすごく失礼な質問だと思いますが、どうして恭介さんと別れたんですか?
そんなに長くつき合っているのなら、彼について一緒にイギリスへ行こうとは思わなかったんですか?」

< 219 / 296 >

この作品をシェア

pagetop