真実(まこと)の愛
礼子は優雅な所作でワインボトルを手に取り、グラスに注いだ。香りを閉じ込めるように、リムが窄まった形状になったワイングラスだ。
「あなたもお呑みになる?」
杉山は麻琴の分のワイングラスも置いていた。
「ありがとうございます。でも、ギネスのあとはボウモアを呑みますので」
一口にアルコールと言っても、それぞれ好みがある。ピートを好む麻琴は甘い酒が苦手だ。
礼子は気分を害することなく「そう」と言って、麻琴の質問に答え始めた。
「恭介からイギリスへ発つ、って聞いたとき、てっきりプロポーズされて、わたしも連れて行ってくれるもんだと思ったわよ。
……『永すぎた春』のいいきっかけになる、ってね」
麻琴も、普通はそう思うでしょう、と思った。