真実(まこと)の愛

「普段使いできる上質なジュエリー」をコンセプトにして一九七〇年代に創業された(株)Jubileeは、通勤から休日のお出かけまで気軽に使える優れモノでありながら、ちょっと気の張ったフレンチレストランやお寿司屋さんにも堂々とつけていける品質の高さだ。

それでいて、海外のブランドよりもリーズナブルなのである。

また、テレビのニュース番組に出演する女性キャスターたちにも貸し出されているため、知的で洗練された雰囲気もある。

そのJubileeの現在の社長は、創業家の二代目だ。

父親から会社を引き継いだ彼は、職人の手技が常識だったこの業界で、いち早くコンピュータを導入し、最新の正確無比な宝石のカッティング技術によって大幅なコストカットを実現させた。

同時に、雑誌などの広告媒体に積極的にアプローチしながら、全国の主要デパートに店舗を展開していく拡大路線に舵を切り、会社に今のような繁栄をもたらした。

すでに五十代にさしかかっているが、いわゆるちょい悪オヤジのレオン系「イケオジ」である。
若い頃から女優やモデルと浮名を流していて、テレビのワイドショーや週刊誌などを賑わせてきた。

……うーん、確かバツが二つか三つ、ついてたと思うんだけども。お子さんもそれぞれにいたような。

他人事(ひとごと)ながら麻琴は心配になって、(よろこ)ばしいことを告げられたはずなのに、表情が曇った。

……もし、自分の友だちだったら、絶対に踏み止まるように忠告するわね。

気が早すぎるかもしれないが、遺産相続で確実にどろっどろに揉めるパターンだ。

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