真実(まこと)の愛
ところが、麻琴の意に反して、
「ふうん……ま、いいよ。それでも」
恭介はこともなげに言った。
「もしそうなったら、僕は麻琴についていくよ。
関西方面で総合診療医の仕事を探すからさ」
……はああぁーーーっ⁉︎
麻琴は顎が外れそうになるくらい、あんぐりと口を開けた。
「そ、そんな……せっかく東京湾岸病院の診療部長に就任されたのに……」
しかも、異例の若さでの就任と聞いている。
「心配しないで。きっとすぐ見つかるよ。
初診の患者さんを診て専門医への橋渡しをする総合診療科って、便利なうえに合理的なのに、日本の医療現場ではまだまだこれからの分野だから、啓蒙活動の一助になれればと思って帰国したんだけどね。でも、麻琴と一緒だったら無医村でも離島でもいいよ。むしろ、そういう場所の方が必要性があるかもね。
それに……海外だって問題ないよ?
一応、ラテン語由来のドイツ語・フランス語・イタリア語くらいだったら、大丈夫だよ。あ、あとスペイン語もね」
なんだか麻琴が望む場所なら、地の果てまでついてきそうだ。
……し、しまったっ。
麻琴は恭介が超ハイスペックなのを失念していた。その気になれば、世界中どこででも暮らせるスキルの持ち主であることも。
「水くさいなぁ、麻琴は。
僕が、愛するきみのキャリアを邪魔するわけがないだろ?それとも、日本女性特有の『奥ゆかしさ』ってヤツかい?」
……違う、違う、ちがあぁーーうっ!
それは、美しすぎる誤解よっ。