最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~
「まさか。貴方……れ、れれれれ煉獄の暗黒龍!?」
そんな馬鹿な! 私には、悲鳴NGは無理難題だった。
上擦った声を上げ、相手を指差す。
指差された全裸マンは、不愉快そうに眉間に皺を寄せる。
そんな顔をされても、目の前にいる自称暗黒龍と、私が知ってる『暗黒龍』と違うのだ。
龍=ドラゴン。ドラゴン=角と翼がはえたマンション3階より大きなトカゲ。
一部、偏見もあるが、私の中のドラゴンとはそう言うもので、昨夜見た暗黒龍だって、翼のはえた大トカゲだった。
しかし、これはどうしたことか。目の前にいるのは……人だ。人間の男性だ。
人間=ドラゴンの式は、成り立たない。
成り立ってしまったら、哺乳類の概念が土台から崩れる。
そもそも、話の原点に戻れば、この世にドラゴンなんてものはいない。
だって、ドラゴンは人間が生み出した空想上の生き物なのだから。
「いかにも。我は七龍王にして、煉獄の暗黒龍。真名《まな》をエヴィエニスと言う」
「ま、ままま待ってください!」
「なんだ? 最弱種族でありながら、我に見初められし、愛おしき最強の妻よ」
告白された気がするが、返事はまだしていない。
婚約も結婚もしていないのだから、このすっぽんぽん……エヴィエニスさんの妻では、断じてない。
もちろん、彼女ですらない。