ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~

「すごいな」


驚く安藤さんに、実松くんはめんどくさそうに言う。


「二択だからですよ」

「それなら一番好きな食べ物は?この質問ならいいだろ」


たしかに、その質問なら選択肢が多いから重なりにくい。


「せーの」


という安藤さんの掛け声で同時に答える。


「お赤飯」「お赤飯」
「マジか」


これにはさすがに当人である私と実松くんも安藤さん同様、驚いてしまい、思わず顔を見合わせてしまった。


「真似しないでよ」

「そっちこそ。真似すんな」


言い合う私たちを見兼ねて、安藤さんが間に入った。


「おいおい。外でまでケンカするな…って、待てよ」


一転して神妙な面持ちに変わった安藤さんは、私と実松くんを交互に見て続けた。


「お前たち、本当は相性がいいんじゃないか?」

「はい?」「はい?」


また実松くんと声が重なってしまった。


「だってそうだろ。ここまで味覚が同じなんて、奇跡的だよ。喧嘩するほど仲がいいって言うし。どうだ?ふたり、付き合ってみたら?ほら、恭子のご両親も気に掛けてるみたいだし」


親戚に当たる私を安藤さんはとかく気にしてくれる。

おそらく安藤さんの結婚式に参列した時にでも両親がなにか言ったのだろう。

最近では実家に電話するたび、『仕事が忙しくて彼氏は出来ないの?』と聞かれるくらいだから。

ただ、それにしたって実松くんはない。

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