ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
話を逸らすならもう少しまともな逸らし方をして欲しい。

そもそも、安藤さんは建築士であるのと同時に経営者なんだから。

半人前を世に出して、事務所の名に傷が付くことなど、絶対にしない。

絶対にしない、はず……。


「恭子。そんな不安そうな顔するな」


考えているうちに自信を無くした私の気持ちを安藤さんが察してくれた。


「大丈夫だ。俺は親戚とか関係なく、お前の実力は認めてる。それはお客様の評価からも明らかだ」


良かった。

ほっと胸をなでおろす。


「だが」


安藤さんの接続詞に、和らいだ気持ちが引き締まる。


「今のままでは俺を超えられないよ。建築家としても、営業マンとしても」


前者は私に。

後者は実松くんに視線を向けた安藤さんは、ニヤリと挑戦的に微笑んで見せた。

その顔を見て『悔しい』と『ワクワクする』という相反する気持ちが芽生える。

まったく。

安藤さんにしてやられた。

まんまとモチベーションを上げられたのだ。


「お待たせしました。サラダになります」


しかも会話はそこで中断。

話の内容を気にかけるには十分で、興味なさそうだった実松くんの心にさえも大きく響いていた。
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