ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「返してよ。それともいいお店、知ってるの?」
「俺が知ってる店は高い店ばかりだよ」
営業で使うのか、普段から使っているのか、そこは分からない。
でも譲れないものは譲れない。
「ご馳走になる理由がないから」
実松くんが引かないなら断るつもりでいた。
それなのに実松くんは理由が欲しいなら作ればいいと言う。
「恋人なんてどうだ?」
「はい?」
なにを言い出すのかと思ったら『恋人』とは。
「ハハ。その冗談、面白くない」
乾いた笑いとともに言うと実松くんも口先だけで笑った。
「ま、そういう反応になるわな」
「じゃ。ファミレスにでも…」
そう言いかけたところで、実松くんは「却下」と言った。
そして私の手を取り歩き出した。