ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「うーん」
体を伸ばしてみると、体が軽くなった気がする。
「ありがとう。リフレッシュ出来ました」
エステの待合室に迎えに来てくれた実松くんにお礼を伝えた。
「なかなかいいものだろ?」
エステをクセに出来るほどお金は持っていないけど、たまの贅沢に良いかもしれない。
頷いて答えると、実松くんは満足そうに微笑んだ。
「じゃあ、ランチ行こうか」
「自然食が有名なんでしょ?楽しみだな」
実松くんの後について行くと、バイキング会場は時間がズレたおかげでさほど混んではいなかった。
早速、お皿を手に取り、一品一品、少しずつ取り分ける。
「そんなに食うのかよ?」
全種類食べてみたかった私はテーブルいっぱいに料理を運んできた。
反対に実松くんは自分の好きなものだけを持って来ていた。
その取り方を見て、実松くんがこの場に来るのが初めてじゃないと確信する。
エステの場所は間違いなく案内してくれたし、コーヒー牛乳だって、私はどこで売っているものなのか知らなかった。
それ以前に、ここまで2時間弱の道のりをカーナビなしで来たのだ。
でも、本人には言わずにおいた。
だって「ここに来るの、初めてじゃないよね?」なんて、「誰と来たの?」って聞いているようなものだ。
そんなの元カノの中の誰かに決まっているんだから。
無粋な真似はしない。
ただ、ほんのすこしだけ、胸にモヤっとしたものが渦巻いていた。
だから着替えを済ませたあと「このあと行くところだけど」と実松くんが言い出した言葉を私は遮った。
「実松くんが行ったことのないところに行きたい」
「行ったことのないところ?」
復唱したということは、おそらくこのあとの場所も、実松くんが行ったことのあるところなのだろう。
「ごめん。なんでもない」
胸のモヤモヤは残っている。
でも、計画を立てて、連れて行ってくれる実松くんにわがままを言うのは得策ではないと判断した。