俺様外科医と偽装結婚いたします
店内をざっと見回すと、派手な色合いのものや、少し露出度が高いのではないか思われる洋服たちが、いくつも目に飛び込んできて、私はそこはかとなく怖くなる。
店の中で一番地味な服を持ってきてもらったとしても、きっと私には華やかすぎて似合わないだろう。
「彼女を、よろしく頼む」
怖気づいてしまった私の肩に環さんが手を乗せた。
捕まってしまったような気持ちになり焦りだす私を見て、店員さんは口元に上品な笑みを浮かべる。
「かしこまりました。こちらへどうぞ」
なんどか振り返り見ながらも、店員さんが私たちを先導するように店の奥へ向かって歩き出す。
すると環さんも、私の肩に回した手に力を込め、そのまま強引に前へ進み始めた。
逃げ出すことも抗うことも出来ぬままに通されたのは、いわゆるVIPルームのような個室だった。
室内に入ると、私は環さんによって店員さんへと引き渡され、そのままカーテンを引いた向こう側にあるフィッティングルームへと連れて行かれた。
「では、はじめさせていただきますね」
待ち構えていた別の女性の店員さん三人が笑顔でにじり寄って来て、私は出かかった悲鳴を飲み込んだのだった。