俺様外科医と偽装結婚いたします
着せられたのはボルドー色のエレガントなノースリーブのドレスだった。
ふわりとした生地の気心地はとても良く、ミモレ丈のスカートは流れるように軽やかで気持ちも弾みそうになるが、背中が大きく開いているため恥ずかしい。
しかもカーテンは容赦なく開けられる。
まるで王様のように、一人掛けのソファーに悠然と足を組み座っている環さんの視線にさらされることにもなり、余計に羞恥心を煽られる。
「久郷様、いかがですか?」
店員の問いかけに、環さんの視線が突き刺さる。
自分を取り囲む店員さんたちをなぎ倒し逃げ出したくなるのを、必死に堪えた。
環さんと目が合った瞬間、彼は小さく笑って、軽く首を横に振った。
「……次」
「ちょっと! 何なのよその言い方! しかも今笑ったでしょ! ひどい!」
叫びも空しく、店員の手によってぴしゃりとカーテンが閉じられてしまう。
「このくらいでへこたれてはいけませんよ。久郷様のお眼鏡にかなうまで続けますので」
「……えっ?」
完璧な笑みを浮かべながら告げられた悪魔の宣告と共に、オフショルダーでミニ丈のネイビーのワンピースを手に目の前に立ちふさがられ、顔から血の気が一気に引いていく。