俺様外科医と偽装結婚いたします
「まじか。今日も話に夢中になっているみたいだな。迎えに……行った方が良いよな?」
続けて陸翔がお祖母ちゃんへ疑問を投げかけると、すぐさま「あぁそうしてちょうだい」と言葉が返された。
「はーい」と返事をして陸翔は自宅に戻っていく。
事態が一変するきっかけを作ったのは、陸翔の「会社を辞めて、俺がこの店を継ぐ」という決意に満ちた一言だった。
小さいころ弟は、店のカウンター席に座って祖父母の働く姿をよく眺めていた。
口にはしなくても、私と同じように一緒に働きたいという思いを抱いているだろうこともなんとなく感じていた。
だからきっと、私が仕事を辞めて店で働き出したことで触発されてしまったのだろう。
陸翔の気持ちに共感し全力で応援したくなる一方、お祖母ちゃんはそんなこと絶対に許可しないだろうとも思った。
……のだけれど、私の予想は大きく裏切られることとなる。
お祖母ちゃんは陸翔の言葉に嬉しそうに顔を綻ばせ、「分かった」と涙までこぼしたのだ。
その時、跡目に関してお祖母ちゃんの口から、望んでくれるなら陸翔だけは例外だったことを聞かされ、私は両親と共にしばらく唖然としてしまったのだった。