俺様外科医と偽装結婚いたします
お祖母ちゃんが胸の内を明かしたことで、陸翔は本当に仕事を辞め、見習いとして働き始めた。
陸翔は昔から料理をするのが好きだった。
小学六年生の時、お祖父ちゃんが得意としていたふわふわ卵のオムライスを、見よう見まねで作ってみせたこともあった。
長い間試行錯誤を重ねていたそのオムライスは、今、それ目当てで来店するお客様がいるくらいにうちの人気メニューとなっている。
陸翔は料理人としての才能を、祖父母からしっかり引き継いでいた。
勉強もたくさんして調理師の資格も取り、店への愛情と料理への熱意と共に、着実に一歩一歩前に進んでいる。
私も慣れ親しんだこの店がいずれ無くなってしまうことを寂しく感じていたし、このまま陸翔が継いでくれるというなら大賛成である。姉として出来る限り力になりたいと思っている。
父は「本気でやりたいと思うなら頑張りなさい」と言葉をかけていたし、母は心配そうな顔で「大変よ」を繰り返し、最後には「みんなで力を合わせて頑張りましょうね」と言った。
ふたりの反応はほぼ予想通りで特に何も思わなかったけれど、お祖母ちゃんに関しては納得できなかった。