俺様外科医と偽装結婚いたします
それに対して環さんはお祖母ちゃんを支えるように慌てて手を伸ばす。
「てっきり咲良だけが盛り上がっているとばかり……まったくもう。それならそうともっとはやく言ってくれたら良かったのに。こちらこそ不束な孫ですが末永くよろしくお願いしますね」
わずかに頬を染めて私を叱りつけたり環さんに頭を下げ返したりと、いつもの快活なお祖母ちゃんが戻ってきたように思えた。
ホッと胸をなでおろした時、廊下の方からなにやら騒がしい声が聞こえてくる。
「なんて素敵なのかしら。母さん、うっとりしちゃったわ」
「すぐにでも役所から婚姻届もらってきて、気が変わらないうちにサインしておいてもらった方が良いんじゃないか? 断言しても良い。姉ちゃんの前に環さん以上の男性はもう現れない」
ドアは半開きになっていて、そこの隙間に陸翔とお母さんが話し込んでいる姿がちらちらと見え隠れしている。盗み聞きされていたのだと分かると、恥ずかしさで頬が熱を持つ。
「こんなところでなにしてるんだい! 油売ってないでちゃんと仕事しな!」
お祖母ちゃんが右手を振り上げ抗議すると、廊下のふたりは小さな悲鳴を上げて店の方へ走って行った。