俺様外科医と偽装結婚いたします

今ここで関係を断ち切るかのようなお祖母ちゃんの強い眼差しを、環さんは表情を変えないまま受け止める。


「環さんが責任を感じる必要なんてない。ふたりの縁を無理につなごうとした私たちが悪かったんだ」


言い終わると同時にため息が響いた。しんみりとした雰囲気に飲み込まれて切なさに息苦しさを覚えた時、環さんが前へと一歩踏み出した。


「気にかけるなと言われてもできません。あなたは咲良さんの大切な家族ですから。彼女の力になれるなら、俺は喜んで自分の力を差し出します」


迷いなど微塵も感じさせないほど真っ直ぐな言葉だった。そして環さんはそっと瞳を閉じて、お祖母ちゃんに向かって頭を下げた。


「どうか俺が咲良さんと交際を続けることを認めてください」


ほんの一瞬、時間が止まった。感動で胸が震え、じわりと涙がにじむ。

「環さん」とかすれ声で呼びかけると、彼は姿勢を戻して再びお祖母ちゃんと向き合った。


「本気です。首を縦に振って貰えるまで何度でも来ます」


真っ向からぶつかって来られたことで、お祖母ちゃんは唖然とした顔のままソファーから立ち上がった。

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