俺様外科医と偽装結婚いたします
腰の痛みで時折顔を歪めていても、私に向ける銀之助さんの表情から約束を取り付けたいという必死な思いが手に取るように伝わって来くる。
それがなんとなく可愛いく思えて、つい肩を揺らして笑ってしまう。
「良かった! それなら予定を確認した後、お店の方に連絡させてもらっても?」
了承の笑みを浮かべ頷き返すと、銀之助さんも嬉しそうに笑った。
「きっと、孫の環も咲良さんのことを気に入るでしょう。咲良さんにも環を気に入ってもらえるよう願っております」
その点に関しては、今の私には何の約束も出来ない。返事に困り、ただ曖昧に笑い返した。
「あぁ、来ました」
銀之助さんが公園の出入り口へと目を向けて、ぽつりと呟いた。
つられて見ると、入口の向こう側に先ほどまではなかった黒い乗用車が一台停車していて、運転席から誰か降りてきた。
「環!」
銀之助さんが呼んだ名前に、思わず息をのむ。
まさかと目を大きくさせて銀之助さんを見ると、茶目っ気たっぷりに笑い返してきた。
「あれが孫の環です」
「ぎっ、銀之助さん!」
こんなタイミングで初対面を果たすことになるとは思っていなかったため、一気に緊張感が込み上げてくる。