俺様外科医と偽装結婚いたします
そんなみんなをがっかりさせてしまう未来を予想し、私だけ表情を曇らせた。
+ + +
予定通り、十八時ぴったりに銀之助さんは現れた。
お母さんの思う通りに仕立てられた私は、訪問着姿のお祖母ちゃんと共にしずしずと店を出た。
待たせていた車はタクシーではなく、黒色の高級セダンだった。
銀之助さんの手の合図に応じるように運転手が後部座席のドアを開け、私たちに対して恭しくお辞儀をする。
銀之助さんに「さぁ、乗ってください」と促され、お祖母ちゃん、それから私の順に車へと乗り込んだ。
運転手さんは車の扉に手を添えたまま、確認するように銀之助さんへ目を向けた。
「院長も後部座席に乗られますか?」
「……いや。私は助手席の方に」
そのやりとりを耳にして、私はお祖母ちゃんと目を合わせた。
院長と聞いてぱっと思い浮かべる役職は医療機関の長で、もしかしたら銀之助さんはすごい人なのかもしれないと動揺と驚きでいっぱいになっていく。
しかしお祖母ちゃんの様子は、私とは明らかに違っていた。
動揺している様子が全く伝わってこない。
「もしかして、銀之助さんが院長先生だって知ってたの?」