俺様外科医と偽装結婚いたします
静かに問いかけると、お祖母ちゃんが肯定するように唇の片端だけをあげてみせた。
「あぁ。加美里病院のね」
「はぁっ!?」
ちょうど助手席のドアが開いた。品のない声を思わず発してしまったことを後悔しながら、私は口元を手で覆う。
助手席に腰を落としながら、銀之助さんが不思議そうな顔をこちらへ向けた。
「咲良さん、どうかなさいましたか?」
「いっ、いえ。なんでも……ございません。大声出してすみませんでした」
身体を小さくさせて銀之助さんを見つめ返した私に、穏やかに笑いかけてくる。
「そんなにかしこまらないで。どうか普段のあなたのままでいてください」
「……あ、ありがとうございます」
銀之助さんの正体を知った今、人柄や言葉の重みが増したような気がして、どうしても恐縮してしまう。
加美里病院のような大病院の院長。
そんな大物の孫との縁談が舞いこめば、たとえ相手の人柄を知らなかったとしても、お祖母ちゃんの性格なら喜んで進めるだろう。