フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
屋外を収録したあとは、屋内である。
応接間に案内した彼らが撮影している間に、わたしはお茶の支度するためにキッチンへ移った。
アイランドキッチンに最高級の祁門の茶葉を用意する。
小笠原は中国勤務の際に、祁門紅茶の産地である安徽省の高級農園に何度も足を運んで販路を開いたそうだ。
なので、祁門紅茶に対してはかなり思い入れが強いらしく(でもさすがにgあたりの単価がバカ高いため)従業員販売の三割引きで購入して帰ってきた。
次は、カップボードの祖母のコレクションからそれに見合った茶器を探す。
——やっぱりボーンチャイナにしようか。
東洋風な絵付けのカップがあったかな……
『紅茶なら茶葉の大きさにもよるが一人分がティースプーン一杯だから、いくら君でも何度か練習すればきちんと量れるようになるだろう』
小笠原にそう言われて、ここ何日間か他の廉価な茶葉で何度も「特訓」させられていた。
それまでは楽ちんのティーバッグだったのだが、やはりきちんと淹れた紅茶は断然香りが違う。
——かなりムカついたけれども、早速役に立ったわ。
百貨店は立地の良い都会のターミナル駅などにどーんとビルを建てて場所を提供する代わりに、入ったブランド店から家賃と売上の一定割合をもらう仕組みとなっている。
そのため、実は小売業というよりも「不動産業」に近い。
我が大坂江戸屋百貨店の場合、本来の「小売業」であるバイヤーとして仕事できるのは直営の食料品などの売り場と物産展などの催事場、そしてお得意様向けの外商部くらいだ。
——全部、小笠原の受け売りだけどね!
今では社長であるうちの父に付いて経営の中枢に関わる小笠原が、未だに現場で商品開発のプロジェクトに携わっているのは……
もしかしたら、デパート本来の姿である「バイヤー」を忘れたくないからかもしれない。