フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】

゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


いつだって、パーティなんて「佐久間家(いえ)」がらみの(しがらみ)でイヤイヤ出席させられていた。

政財界が関係するパーティは、目も(くら)むような華々しさの陰で、老若男女問わず魑魅魍魎が跋扈する「戦場(いくさば)」そのものだった。

その中で一歩も引かずに堂々と渡り合わなければならない「武者(わたし)」にとって、ドレスは(よろい)でヘアメイクは(かぶと)を意味する。

——さぁ、パーティに出ると決まったからには、キッチリバッチリ「装備」して行ってやるわよっ!


作家・神宮寺 タケルの新作出版記念パーティの日、わたしはひさしぶりにベリが浜に面した最高級ホテルにあるビューティーサロンを訪れた。

自分で支払うとなると目の玉が飛び出すような金額なのでずっと「お預け」状態だったけれども、今回のパーティは小笠原からの「要請」だ。

「必要経費」として彼にスポンサーになってもらう。

——っていうか、パーティに出席する条件にしたんだけどね。

でないと、今のわたしの経済状況ではとてもじゃないけど「装備」を整えることができない。


そして、エステティシャンの三上さんの神の手(ゴッドハンド)による至福の施術を受けたあと、アートディレクターの竜生くんによって「史上最高のわたし」になるようヘアメイクしてもらった。

もちろん、彼に頼んでいたパーティドレスを身につけている。

予約の際に『夫が上海から帰国して初めて二人で出席するパーティ』だと告げると、今までのハイセンスだけど大胆で蠱惑的だったテイストをいっさい排して、新妻らしい楚々とした(たたず)まいをしっかりとキープつつも成熟した大人の雰囲気を醸し出すデザインのドレスを用意しておいてくれた。

「……竜生くん、今日もとっても素敵にしてくれてどうもありがとう」

「いえいえ、こちらこそレイカさまのようなお美しい方をさらに美しくさせていただくお手伝いができて光栄ですよ。
どうぞご主人との初めてのパーティを楽しんできてください」

竜生くんは出来栄えに手応えを感じた様子で、にっこりと微笑んで見送ってくれた。


全身「装備」を固めて意気揚々とサロンを出たわたしは、パーティ会場のフロアへ上がるためにエレベーターホールに向かった。

パーティ会場はこのホテルの上階にあるVIP御用達(ごようたし)のバンケットルームだ。

「……君はパートナーを置いて、一人でパーティ会場へ入る気か?」

突然、聞こえてきた声の先に視線を向けると——

エレベーターホールにある本革のソファに長い脚をゆったりと組んで座っていた小笠原が、おもむろに立ち上がった。
< 129 / 165 >

この作品をシェア

pagetop