フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
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VIPラウンジでウェルカムドリンクを飲んでいた招待客たちが、ぞくぞくとバンケットルームへ入っていく。
タキシード姿の小笠原が右肘をわたしに向ける。
——へぇ……「エスコート」してくれるんだ。
彼の肘にわたしの左手を預けると、わたしたちはゲストたちの流れに続いた。
今まで長澤 典士が数々のパーティでわたしのパートナーを務めてくれたけれど、こんなふうに「入場」したことはない。
「夫」にエスコートされながら、ふかふかした絨毯の上をピンヒールで歩く。
いつものように十センチヒールだが、今宵のコンサバティブなパーティドレスの雰囲気に合わせて竜生くんが選んでくれたのはフェラガモだ。
バンケットルームに足を踏み入れたとたん、怖いくらいにギラギラと輝く巨大なシャンデリアが目に飛び込んでくる。
真っ白なシャツに黒いベストを着用したバンケットスタッフが、手にした銀のトレイから黄金色に輝くシャンパングラスを差し出す。
わたしが微笑みながら受け取ったあと、彼もまたグラスを受け取る。
「……大丈夫なの?」
小笠原は呑むと顔が真っ青になって気持ちが悪くなるタイプの下戸らしく、ジュースと変わらないくらい低アルコールのうっすーいカクテルでもダメらしい。
「さすがに乾杯のときはグラスを持っていないと不自然だからな。口を湿らす程度だ」
なので、先刻までいたVIPラウンジでも口にしたのはノンアルコールのドリンクだったのだが——
これまで避けて通ってきた大坂江戸屋百貨店関係の人たちに紹介されてご挨拶していたら、どこから湧いてきたのか若い女性たちがどっと押し寄せてきて、小笠原にウェルカムカクテルを勧めてきたのだ。
もちろん、がっつりアルコール入りだ。
——「妻」であるわたしが、代わりにぜ〜んぶ呑み干してやったけどね!
バンケットルームではゲストたちがそれぞれ知り合いと談笑している。
わたしも見知った顔がないかと辺りを見回す。
すると、目の前にヒールを履いて一七〇センチほどある身長の女性がいた。
セミロングのエキゾチックな黒髪が、こっくりとしたプラム色のパーティドレスによく映えている。
ぱっくり開いた背中から垣間見える「天使の羽」の肩甲骨と、スリットからちらりと覗くきれいに筋肉のついたカモシカのような脚が美しい。
——もしかして、同業者かしら?
後ろからの視線を感じたのか、彼女がこちらに振り向いた。