フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
「あっ、ひさしぶり!」
振り向いた女性の顔が、パッと明るくなる。
パーティなので普段よりも華やかなメイクであるとは思うが、それでもやはり同業者と見紛う容顔だ。
「大坂百貨店の上海店に赴任したって聞いてたけど、もう帰国してはったんやね」
彼女は関西弁だった。
——もしかして……大阪にいた頃の元カノとか……?
先ほどのウェルカムドリンクを持って「突撃」してきた女の子たちには卒なくこなしていたのに、彼女に対する雰囲気が明らかに違った。
なんだかモヤっとして、小笠原の肘にかけていた手をすっと離した。
「ご無沙汰しております、青山様。
ご連絡が遅れましたが、帰国後は本部の営業政策室に戻りました」
小笠原が「百貨店マン」らしく折り目正しいお辞儀をして挨拶する。
——なぁんだ、ただのお得意様のうちの一人か。
たぶん、大阪で勤務していた頃からの顧客なのだろう。
そう思った矢先……
「ややちゃん、やっぱめっちゃ美人やなー。
子ども産んでも相変わらずスタイルもええし。
いや、おれが上海へ行く前に会ったときよりも、ずっと綺麗になってるんとちゃうか?」
頭を上げた小笠原が雰囲気をガラリと変え、関西弁になった。
——えっ……⁉︎
先刻、耳にした『ややちゃん』は空耳ではなかったのだ。
——それに、なんだか……ものすごくチャラくなってない?
今の小笠原は人当たりがいいのを通り越して、紙のように「軽い」。
「そっちこそ、相変わらず口が上手いなぁ」
彼女がまんざらでもなさそうに、くすくすと笑う。
そういえば、以前母が電話で……
『とーっても優しくて感じの良い人よね。
おまけに、ものすごーくハンサムだし』
小笠原のことをそう言っていたが、もしかして母に対してもこんなふうに「キャラ変」したのだろうか……?
「——おい、小笠原」
突然、怒りの滲んだ声が飛んできた。
「こんなところで他人の嫁を口説くな」