フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】

「あの……」

青山氏の妻が、わたしの方を向いておずおずと声をかけた。

「小笠原さんの奥様ですよね?
三年前の結婚式でお見かけして以来なので……」


青山氏の視線もわたしに移る。

すると、小笠原も思い出したかのようにわたしを見た。

すぐ隣にいたはずの「(わたし)」とはなぜか距離ができていたため、ほんの一瞬だけ不可解な顔になったがすぐに戻る。


——別に、このまま忘れていてくれてもよかったんだけどね。

東京生まれ東京育ちのわたしは、ひさびさに再会して関西弁(おくにことば)で歓談する彼らの中へずかずか入っていくほど野暮ではないのだ。


「三年前の結婚式のときは、せっかく来てもらったのにすんげぇ人やったからさ。
満足に挨拶もできへんかって申し訳なかった」

小笠原が済まなそうに弁明する。

どうやら、わたしたちの結婚式に彼らを招待していたらしいが、千人を超える招待客だったのだ。

わたしが覚えているわけがない。


だけど——


「青山様、奥様、主人がいつもお世話になっております。妻の小笠原 レイカでございます。
その節は、こちらがお招きしたにもかかわらず大変ご無礼いたしました」

心にもない綺麗事を並べて、にっこりと笑っておいた。

——あら、わたし……

もしかしたら、モデルだけじゃなく女優のお仕事もできたかもよ?
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