フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
「……もちろん、覚悟の上ですよ」
武田 かおるは、自信たっぷりの笑顔を見せた。
「あなたこそ『江戸屋の娘』ってだけで室長と結婚したはいいけど、妻の立場に胡座をかいて何の貢献もしていないんですもの。
もうすぐ、室長にとって本当にふさわしい誰かに取って代わられるかもしれませんね」
その『誰か』は自分だ、と言っているのも同然の口ぶりだった。
——ちょっと……この人の頭、大丈夫?
思わず、呆れ果てた目で見てしまう。
非現実的な願望の果てに自分に都合の良い妄想ばかり描いて、脳内が一面のお花畑になっているとしか思えない。
「ふふ、そんな蔑んだ目でわたしを見ているのも今のうちだと思いますよ」
彼女は挑発するように上目遣いでわたしを見返した。
「ねぇ、あなた……TOMITA自動車の持株会社であるTOMITAホールディングスが、大坂江戸屋百貨店の大株主だということはご存知?」
「世界のTOMITA」と呼ばれるほど世界各地にグローバル展開している、日本が誇る自動車のトップメーカーだ。
——へぇ……あのTOMITAがうちの株をそんなに持ってるんだ。
筆頭株主は合併したときに創業者一族に配分された過半数の株を同じ比率で保有する佐久間家と小笠原家だが、その他の大株主はメインバンクのあさひJPN銀行を擁するあさひJPNフィナンシャルグループしか知らなかった。
「わたしの伯父はね、そのTOMITA自動車の名古屋本社の社長なんです。
もし、あなたたち江戸屋がわたしたち大坂百貨店に無意味で無駄な合併話なんか持ちかけてこなければ——」
彼女は忌々しげに顔を歪めた。