フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
——せ、先生……た、助けて……
溺れる者は藁をも掴む目で神宮寺先生を見た。
——史上最年少でファンタジー小説作家の登竜門「日本ファンタジー小説新人賞」を獲って、それからずーっとベストセラーを飛ばしまくってるんでしょ?
二十代で植木賞も受賞したんだっけ?
それとも候補になったってだけで、まだ受賞してないんだったっけ?
なんたって、わたしは先生の本をまともに読んだことないから知らないのよっ。
と、とにかく……
ここで一発、何か気の利いたことを言って……
全方位まーるくまるっと収めてくれないかしら——?
神宮寺先生はわたしの顔をじっと見据えると、やがてにやりと笑った。
それはまるで……この状況をおもしろがっているかのように見えた。
——あ、あれ?
なんだか、どこで見たような笑顔なんだけど……?
なぜか、どこでなのかは思い出せない——
いったいどこで見たのだろう、と記憶の糸をたぐっていたら……
なんと、神宮寺先生がくるりと後ろを振り向いたかと思うとそのままバンケットルームの前方へスタスタと歩いて行ってしまったではないかっ!
——ええええぇーーっ!?
う、ウソでしょ……!?
ま、まさか……この状況で何も言わずに一人勝手に去って行っちゃったのっ!?
それは、わたしが掴もうとしていた藁がするりと抜けてしまってこのまま溺死やむなし、となった瞬間だった。
にもかかわらず、わたしは……
——あーっ、やっと思い出したっ!
あの笑顔、武尊さんがこのパーティに出席するにあたって見せたあのイヤミな笑顔だっ!
さすが従兄弟同士である。よく似ている。
わたしは彼らにはしっかりと血が繋がっていることを、この身をもってまざまざと知った。