フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
こんなふうにおしゃべりしているうちに、いつの間にかヘッドスパが終わった。
竜生くんに担当してもらうようになって、わたしの髪がどんどんツヤツヤになっている。
今まで頭を預けていた可動式のシャンプー台が手早く動かされて、わたし自身はそのままで次はヘアカットへと移る。
「……今のシーズンに合うものをコスメとともに何着か組んでみましたので、お気に召すコーディネートがありましたらホテルのお部屋にお届けするよう手配しますよ」
竜生くんが滑らかな鋏捌きでわたしの髪の毛先をカットしながら言った。
ヘアスタイリングだけではなくわたしの全身コーデも彼にお願いしていて、わざわざベリが丘タウンのサウスエリアにあるショッピングモールのショップまで出向いてもらっているのだ。
彼がただの「ヘアメイクアーティスト」ではなくて、トータルコーディネートを手がけることのできる「アートディレクター」なのはこういうところだ。
「いつもありがとう。全部いただくわ」
「恐れ入ります……ですが、全部購入していただかなくても結構ですよ。
もちろんレイカさまのお似合いになる色と型のものを考慮して組んでおりますが、お好みもあるかと思いますので」
鏡に映る竜生くんがおだやかに微笑んだ。
「いつも思うんだけど……すごく多幸感のあるパステルカラーよね。ほんとにあんなかわいらしい色、わたしに似合うのかしら?」
「レイカさまのパーソナルカラーはスプリングですからね。お顔映りが良くなるのはあのようなポップで明るいお色ですよ」
実のところ、若いアイドルの子たちの方が絶対似合うであろうパステルカラーなんて、三十歳過ぎるとこっ恥ずかしい以外の何物でもないのだけれども、なぜか竜生くんに選んでもらった「ポップで明るいお色」の方が周りから「肌、キレイですよねー」とか言われて断然評判が良いのだ。
「それから、レイカさまのような骨格診断ナチュラルですと本来はオーバーサイズがお得意なんですが、それではレイカさま特有の手足の長さや細身のお姿が活かしきれないため、今回も敢えて程良く身体にフィットしたものでコーデを組んでみました。
あとでゆっくりとご試着してからご購入をお決め下さい」
骨格診断ウェーブが大優勝なハイウエストだけはさすがに上半身が詰まった感じになってNGだが、骨格診断ナチュラルは「汎用性」が高くて他のタイプのものでも割と大丈夫だ。
骨格診断ストレートのものならほぼ着こなせるんじゃないかな。
なので、いろんな服を着てお披露目しなくてはならないプロのモデルに多いタイプだと言われる。
「……とりあえずカットは終わりました。
このあとシャンプーと髪質改善のトリートメントをしてブローで乾かしてから、ドライカットで最終調整しますね」
わたしは鏡の中の竜生くんに向かってとびきりの笑顔で肯いた。