フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】

「ええええぇーーーっ!」

わたしはプロのモデルのプライドをかなぐり捨てて、ムンクの叫び顔になった。

「君の父親からは『親としては恥ずかしい話であるが、娘の金遣いの荒さには妻ともども辟易している。だが、よろしく頼む』とも言われているが……
だからと言って、おれは素直によろしく頼まれる気はさらさらないぞ」

——えっ、それってどういうこと⁉︎

「妻とは名ばかりの『数えるほどしか会ってなくて、ほとんど初対面に近い』女に、だれがそんな無駄金を出すか」

彼はそう言い放つとソファから立ち上がった。

仕事帰りなのだろう、見るからにオーダーとわかる英国(ブリティッシュ)スタイルの仕立ての良いスリーピースを着用していた。

「確か君は、結婚式のあと『芸能(モデル)のお仕事も辞める気はない』と言っていたよな?
だったら、おれがここに滞在する分はもちろん支払うが、君が自分で使う金は君自身で稼ぐことだな」

そして、スーツケースの一つを持って奥の部屋へと向かった。

——ムカつく!
三年も前の結婚式のあとに言ったことを、今さら持ち出すなんて……

しかも、期待していた『セレブなミセス枠』での『需要』は見込めなかったというのに……


だけど、今はそんなことよりも——

「ちょ、ちょっと待ってよ!
わたしのベットルームに勝手に侵入しないでよっ‼︎」

すると、彼は首だけ振り向くと、ものすごく険しい目でわたしを睨んだ。

「ベッドルームを通らないとバスルームに入れない間取りじゃないか。
おれは今すぐこの堅苦しいスーツを脱ぎ捨てて、風呂に入りたいんだ」

この「ローマ字でGから始まる虫」でも見るかのような目には既視感(デジャヴ)がある。

「それに……」

——『それに』何よ?


「いかにも満腹そうな顔で帰ってきて、おまけに酒くさいときている君と違って……
おれは今、ものすごーく腹が空いているんだ!」
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