フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
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「——詰んだわ……これから、どうしたらいいの……?」

あのあと、小笠原が勝手にバスルームに入ろうとするのを全力で阻止したわたしは、猫足の瀟洒なバスタブに浸かりながら一人ごちる。

——だって、ほとんど見ず知らずの男のあとのバスタブなんか、気持ち悪くて入りたくないじゃないっ!

小笠原からは子々孫々末代まで祟られるようなものすごい目で睨まれたけれども、客室清掃(ハウスキーピング)してくれたあとでなきゃ絶対無理無理……


それにしても……

まさか、我が父親が「(ヤツ)」と(つる)んでわたしを「兵糧攻め」しようとしてるなんて、夢にも思わなかった。

——誰からの援助もなしに、いったいこの先どうやって生活しろっていうのよっ!

それこそ、絶対無理無理無理……

そもそも、わたしの実家のデパート「江戸屋」と向こうの「大坂百貨店」とは百年近く同業他社(ライバル)関係で、犬猿の仲だったのだ。

斜陽産業と言われる百貨店業界の再編のためにどうしようもなくなって、泣く泣く両社が手を結んで「大坂江戸屋百貨店」として合併したというのに……

——確か、どちらが「代表取締役(だいとり)」を担うかでかなりの駆け引きがあったんじゃなかったっけ?

だからこそ「江戸屋」佐久間家のわたしと「大坂百貨店」小笠原家の御曹司が「政略結婚」する羽目になったのだ。

その結果、当代は「江戸屋」側のわたしの父が「代表取締役社長」、「大坂百貨店」側の彼の父親が「取締役会長」に就任することが決まった。

そして、次代はわたしの夫となった小笠原家の御曹司が代表取締役社長となる。

さらに、次々代の代表取締役はわたしと小笠原家の御曹司との間に誕生した子どもがすでに「内定」しているらしい。

——生まれてくるかどうか、甚だ疑問以外の何物でもないのにご苦労さまなことだわ。


父も「夫」も互いに老舗の百貨店を率いて背負って立つ運命の人たちだからなぁ……

「会社のため」なら、どんな相手でも心の中では舌を出してしれっと手を組めるのかもしれない——
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