フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
「かしこまりました。それでは係の者が参りますので、お手数ですがあちらのサービスカウンターの方でお手続きをお願いいたします」
すると、すかさずサービスカウンターから店員さんがやってきて「こちらでございます」と促される。
案内された「サービスカウンター」には、居心地の良いカフェにあるようなテーブルとチェアが置かれていた。
「お飲み物はいかがなさいましょう?」
チェアに腰を下ろすと、テーブルの上にドリンクのメニュースタンドがあった。
店内には♪Garota de Ipanemaのインストゥルメンタルが流れていて、まさにカフェである。
iP◯dを持ち込んでネト◯リでも観て、まったりしたい気分だ。
「じゃあ……抹茶ラテで」
英国式の洋館ではなんとなく紅茶(楽ちんなのでティーバッグだけど)ばかり飲んでいるため、外に出たときは違うものを。
「それでは、お飲み物をお持ちする間にこちらのタブレットに表示されました必要事項にご記入くださいませ」
わたしは差し出されたタブレットとスタイラスペンを受け取ると、ディスプレイに表示された指示に従って進んでいった。
クレカの登録ではいつものクセで父の家族カードを出しそうになったが、いっさい払ってくれなくなったので渋々自分名義のクレカを出す。
——結婚したんだから家族カードくらい渡してくれてもいいのにっ!
不本意にも、月末に明細を「夫」に見せて「必要経費」として認められた分が「生活費」として支給される取り決めとなった。
老舗百貨店の御曹司として生まれ何不自由なく育ってきたはずの小笠原は、実はかなりのケチだった。
おかげでわたしは、彼から教えられた家計簿アプリを強制的にダウンロードさせられ、これからはお店からきちんとレシートをもらって、いちいちスマホでスキャンして「記録」しなければならなくなったのだ。
わたしは抹茶ラテを飲みつつ、なんとか無事会員登録を済ませた。
(ちなみに、買い上げた商品を毎回家まで配達してくれる設定もした!)
会員証は完全カードレスでスマホのアプリ内にしかなく、それをレジカートのリーダーにかざしてからでないとカートは使えないのだそうだ。
けれども、そのあとは商品のバーコードをスキャンするだけで、なんとカート自身が勝手に合計金額を計算してくれるのだ!
——だから、「レジ」カートって言うのね!
そして、出口付近にある駅の改札のようなゲートをカートで通過すると、それと同時に登録したクレカによる支払いが終了、というシステムらしい。
お買い物を終えてスーパーの外へ出たときのわたしは「達成感」でいっぱいだった。
今でも「通帳」かなと思っていた「大正屋」が「Taishoya」となって最先端のシステムに変貌していた。
にもかかわらず、わたしはやり遂げられたのだ。
——なんだ、わたしって「やればできる子」だったのね!
商品のバーコードがなかなかスキャンできなくてモタモタしていたら、最初に声をかけてきた店員さんが「お手伝いしますね」と駆け寄ってきて、その後はわたしの代わりにカートを押してくれて、「祖母のレシピノート」に記されていた食材も全部探してスキャンしてくれて、お会計のゲートもいっしょに通過してくれたけどね。