フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
スーパーへの行きが下り坂ということは、帰りは上り坂である。
今までどこへ行くにもタクシーを使っていたわたしは慣れない「散歩」をして少し疲れたため、応接間でロッキングチェアに揺られながら微睡んでいた。
しかし、ほどなくして大正屋改めTaishoyaの配達員が購入した食材を持ってやってきた。
わたしは仕方なくロッキングチェアから起き上がり、玄関先の門扉まで出て行った。
うちの担当になったという女性配達員が希望する場所に運んでくれると言うので、裏庭の方にある勝手口へと案内する。
勝手口のドアを開けると、すぐそこがキッチンだからだ。
「次回からは裏木戸の方に回ってお声がけしますね」と言ってキッチンへ運び込んでくれた。
かくして、材料は揃った。
否が応でも「料理」にトライしなければならなくなった。
わたしは祖母のレシピノートを手に取ると、改めてパラパラとめくった。
英国の料理といえば、白身魚のフライにフライドポテトを添えた「フィッシュ&チップス」がど定番だ。
だけど、まーったく料理をしたことのない者にいきなり揚げ物はチョモランマ級にハードルが高い。
——それに、わたしにとってのフィッシュ&チップスは路上のキッチンカーで買ったり、パブに入ったときにビールといっしょにオーダーするってイメージなのよねぇ……
お目当ての料理のページが現れたので、アイランドキッチンの上に並べた食材と照らし合わせる。
スマホで撮ったレシピノートの写真を店員さんに見せて探してもらったのだ。過不足はない。
——よし、さぁ、料理開始だ。