君の手が道しるべ
だって、実際、そうなんだから仕方ない。
 
 梨花に比べれば私なんて数字も取れないし、提案だって押しが弱い。
 
 梨花じゃないけど、契約の方向に持っていく、というような押しの強さがないのだ。これだけの差があって過小評価するなっていうほうがおかしいと思う。
 
 でも、それを今まで人に言ったことはない。そう、史子にすら言ったことはない。

 史子は親友だけど、明らかに彼女は『できる人』だから。契約の方向に持っていくことができる人だから、私のこんな心境を理解してくれるとは思えない。
 
 言ったことがないにも関わらず、そんな私の心境を大倉主査は的確に見抜いていた。

「……だって、本当のことだもの。藤柳さんは数字も稼げる。私は全然ダメ。それは過小評価じゃなくて事実でしょ?」

「数字だけが仕事じゃないでしょう。なんでそんなにこだわるんですか?」

「こだわってるのは私じゃなくて会社の方よ。わかるでしょ? 評価は私がするんじゃなくて会社がするの。で、評価は数字が全てなの」

 言ってしまうと、なぜか楽になった。数字の稼げる人が『できる人』。梨花や史子、そして大倉主査。
 
 私は『だめな人』だ。彼らみたいに実績をあげられない。そんな思いがずっと胸の中に重たくよどんでいたのが、今、口に出してみると、するするとほどけていく。
 
 そうか。認めてしまえば楽になれるんだ。そう思った。

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