君の手が道しるべ
「僕はそんなふうには思ってませんけどね」
眼鏡越しに見える大倉主査の目から、いつの間にか、笑みが消えていた。
「会社が数字にこだわるという点は、否定はしませんけど。でも、個人の評価において、数字ってわかりやすいから、会社も重要視せざるを得ないんですよ。手っ取り早い指標みたいなもんで、ね。だけど仕事ってそれだけじゃないでしょ。数字にならない仕事だって大切なんですよ。永瀬調査役にはそれがある。でも、藤柳さんにはない」
「……」
反応のしようがなくて、私はうつむいてしまう。そんなふうに思っていたなんて、考えもしなかった。
だけど、大倉主査の言葉を真に受けて浮かれるほど、私はお人好しじゃないし子どもでもない。
梨花や、大倉主査よりも長く、この会社に身を置いてきたのだ。
会社が何を求めているのかもわかっているし、私がその要求に応えられていないことも、本当はわかっているのだ。
「数字にならない仕事は評価されない。評価される仕事をきっちりやってみせる人のほうが、会社にとっては意味のある人でしょ。――そんなこともわからないほど、間抜けじゃないのよ、私だって」
大倉主査はじっと私を見ていたが、やがてふうっと大きな息を吐きだして、言った。
「もったいないですね。調査役には、他の人にはない力があるのに、当の本人が気づいていないんですから。――まあ、仕方ないか。いつかちゃんと正しい評価を自分自身に下せるようになってくださいね」
ずいぶん上から目線ね、と言おうとしたが、そこにタイミングよく最初のお料理が運ばれてきて、私の反論はいったん棚上げになった。
どうして大倉主査がそんなことを私に言ったのか、どうして私を食事に誘ったのか、聞きたいことはたくさんあったけれど、いろいろ問いただすのも気が引けて、最後まで口には出せなかった。
眼鏡越しに見える大倉主査の目から、いつの間にか、笑みが消えていた。
「会社が数字にこだわるという点は、否定はしませんけど。でも、個人の評価において、数字ってわかりやすいから、会社も重要視せざるを得ないんですよ。手っ取り早い指標みたいなもんで、ね。だけど仕事ってそれだけじゃないでしょ。数字にならない仕事だって大切なんですよ。永瀬調査役にはそれがある。でも、藤柳さんにはない」
「……」
反応のしようがなくて、私はうつむいてしまう。そんなふうに思っていたなんて、考えもしなかった。
だけど、大倉主査の言葉を真に受けて浮かれるほど、私はお人好しじゃないし子どもでもない。
梨花や、大倉主査よりも長く、この会社に身を置いてきたのだ。
会社が何を求めているのかもわかっているし、私がその要求に応えられていないことも、本当はわかっているのだ。
「数字にならない仕事は評価されない。評価される仕事をきっちりやってみせる人のほうが、会社にとっては意味のある人でしょ。――そんなこともわからないほど、間抜けじゃないのよ、私だって」
大倉主査はじっと私を見ていたが、やがてふうっと大きな息を吐きだして、言った。
「もったいないですね。調査役には、他の人にはない力があるのに、当の本人が気づいていないんですから。――まあ、仕方ないか。いつかちゃんと正しい評価を自分自身に下せるようになってくださいね」
ずいぶん上から目線ね、と言おうとしたが、そこにタイミングよく最初のお料理が運ばれてきて、私の反論はいったん棚上げになった。
どうして大倉主査がそんなことを私に言ったのか、どうして私を食事に誘ったのか、聞きたいことはたくさんあったけれど、いろいろ問いただすのも気が引けて、最後まで口には出せなかった。