君の手が道しるべ
「おはようございます」
いつものようにまっすぐ運用課に向かったが、席にはまだ誰もいなかった。いつもならこの時間、梨花が先に出社していて、経済新聞を読んでいるのだけど、今日はなぜか姿が見えない。
一瞬、嫌な予感(もしくは、面倒な事態になりそうな予感)が胸をかすめた。脳内デフォルメされた妖怪が、新聞片手にみるみるふくらんで、妖怪からモンスターに格上げされていく。
その瞬間、
「おはようございます」
営業室に梨花が入ってきた。
「おはよう」
梨花はすたすたと自席につき、いつものようにパソコンの電源を入れてから、手にした経済新聞を広げはじめた。警戒していたほどにはとげとげしくはないものの……今のところ、私と目を合わせようとはしない。
まあ、仕方ないか。あれだけ大倉主査を公然と狙っていたのに、当の大倉主査に路上で振り切られたのだから、なんとも思わないはずがない。おまけに大倉主査と一緒にタクシーに乗っていたのが私なんだから、腹立たしく思っても当たり前だ。
などと考えていると、突然、梨花がこちらを向いた。
「調査役、今日の帯同訪問、10時ですけど大丈夫ですか?」
「え? ああ、うん。大丈夫。太田さんだったよね」
私は机の上に広げた手帳を見ながら答える。
いつものようにまっすぐ運用課に向かったが、席にはまだ誰もいなかった。いつもならこの時間、梨花が先に出社していて、経済新聞を読んでいるのだけど、今日はなぜか姿が見えない。
一瞬、嫌な予感(もしくは、面倒な事態になりそうな予感)が胸をかすめた。脳内デフォルメされた妖怪が、新聞片手にみるみるふくらんで、妖怪からモンスターに格上げされていく。
その瞬間、
「おはようございます」
営業室に梨花が入ってきた。
「おはよう」
梨花はすたすたと自席につき、いつものようにパソコンの電源を入れてから、手にした経済新聞を広げはじめた。警戒していたほどにはとげとげしくはないものの……今のところ、私と目を合わせようとはしない。
まあ、仕方ないか。あれだけ大倉主査を公然と狙っていたのに、当の大倉主査に路上で振り切られたのだから、なんとも思わないはずがない。おまけに大倉主査と一緒にタクシーに乗っていたのが私なんだから、腹立たしく思っても当たり前だ。
などと考えていると、突然、梨花がこちらを向いた。
「調査役、今日の帯同訪問、10時ですけど大丈夫ですか?」
「え? ああ、うん。大丈夫。太田さんだったよね」
私は机の上に広げた手帳を見ながら答える。