君の手が道しるべ
「どうも悠介は人を必要以上に分析する癖がありましてね。小さい頃から、あいつは威張ってるだけで中身がないとか、あいつは人当たりはいいけど腹の中でなにかしら企んでるとか、周りの人間のの評価をよく聞かされたもんです。父親は海外赴任中だし、母親は小さい頃に亡くしてますから、まあ、私が悠介の保護者だったというわけでね。――だから、悠介は小さい頃から友達がいなかったんですよ」
別にいなかったわけじゃない、と大倉主査が不服そうにつぶやいたが、太田さんはそれをあっさり無視した。
「永瀬さんも聞いていると思いますが、悠介は退職が決まっています。もともと銀行には長く勤める予定ではなかったし、いずれは悠介が家業の後を継ぐことは前々から決まっていたもので、本人の意向も聞き合わせて、この時期になったわけですが――なのに、最近になって、やっぱり銀行に残りたいと言い出しましてね。私もびっくりしてしまいました。いったいどうして気が変わったのかと問いただしました。そうしたら、原因は、あなただって言うんですよ」
私は意味がわからずに、ただただぽかんとするばかりだった。
どうしてここで私が出てくるんだろう……と思っていると、太田さんがにこりと笑って言った。
「会社にどうしても気になる女性がいるけど、相手は自分のことをなんとも思っていない。でも、たぶん、自分にはとても必要な人だと思う。悠介はそう言いました。――普通ならそれで理由としては充分です。ただ、悠介の場合はそれだけではすまない」
別にいなかったわけじゃない、と大倉主査が不服そうにつぶやいたが、太田さんはそれをあっさり無視した。
「永瀬さんも聞いていると思いますが、悠介は退職が決まっています。もともと銀行には長く勤める予定ではなかったし、いずれは悠介が家業の後を継ぐことは前々から決まっていたもので、本人の意向も聞き合わせて、この時期になったわけですが――なのに、最近になって、やっぱり銀行に残りたいと言い出しましてね。私もびっくりしてしまいました。いったいどうして気が変わったのかと問いただしました。そうしたら、原因は、あなただって言うんですよ」
私は意味がわからずに、ただただぽかんとするばかりだった。
どうしてここで私が出てくるんだろう……と思っていると、太田さんがにこりと笑って言った。
「会社にどうしても気になる女性がいるけど、相手は自分のことをなんとも思っていない。でも、たぶん、自分にはとても必要な人だと思う。悠介はそう言いました。――普通ならそれで理由としては充分です。ただ、悠介の場合はそれだけではすまない」