君の手が道しるべ
「……どういうことですか?」
「それは、悠介が、将来継がなければならない家業――会社のことです。永瀬さんも、名前くらいは聞いたことがあると思いますが」
そう前置きして太田さんが口にした社名を聞き、私はそれこそ驚きのあまり口もきけなかった。
名前を聞いたことがあるどころの話ではない。むしろ知らない人はいないんじゃないかというほどの、日本でも有数の総合商社。
その商社の跡継ぎが……大倉主査だって言うの?
「悠介には、会社を継ぐ義務がある。本人もそれを納得してくれている。私にとってはありがたいことですよ」
太田さんはそう言って微笑んだ。
「その自覚があるから、私に相談してきたんです。自分が気になっている女性に会ってほしいと。ただ、素性を明かして会ってしまえば、女性の方でも意識してしまうだろうから、なんとか素性は伏せたまま会ってくれないか、とね」
話を聞くうちに、さすがに私にもすこしずつ話の全容が見えてきた。深く息を吸って、私は顔を上げた。
「素性を明かさずに私に会う手段が、あの、大口のお振り込みだったんですね」
「そう。あれだけの入金があれば、藤柳さんが黙っているはずがないし、当然、永瀬調査役も帯同するはずだから。そしたら、素性は伏せたままで調査役に会える」
大倉主査が冷静に答える。そのあとをひきついで、太田さんが言った。
「あのとき、あなたは話を途中で打ち切りましたね。その理由を教えてもらえますか?」
私はちょっと口ごもった。理由と言っても、単なる思い過ごしのように今は思えるからだ。
でも、太田さんはやさしく微笑みながら私の答えを待っている。仕方なく、私はありのままを答えた。
「それは、悠介が、将来継がなければならない家業――会社のことです。永瀬さんも、名前くらいは聞いたことがあると思いますが」
そう前置きして太田さんが口にした社名を聞き、私はそれこそ驚きのあまり口もきけなかった。
名前を聞いたことがあるどころの話ではない。むしろ知らない人はいないんじゃないかというほどの、日本でも有数の総合商社。
その商社の跡継ぎが……大倉主査だって言うの?
「悠介には、会社を継ぐ義務がある。本人もそれを納得してくれている。私にとってはありがたいことですよ」
太田さんはそう言って微笑んだ。
「その自覚があるから、私に相談してきたんです。自分が気になっている女性に会ってほしいと。ただ、素性を明かして会ってしまえば、女性の方でも意識してしまうだろうから、なんとか素性は伏せたまま会ってくれないか、とね」
話を聞くうちに、さすがに私にもすこしずつ話の全容が見えてきた。深く息を吸って、私は顔を上げた。
「素性を明かさずに私に会う手段が、あの、大口のお振り込みだったんですね」
「そう。あれだけの入金があれば、藤柳さんが黙っているはずがないし、当然、永瀬調査役も帯同するはずだから。そしたら、素性は伏せたままで調査役に会える」
大倉主査が冷静に答える。そのあとをひきついで、太田さんが言った。
「あのとき、あなたは話を途中で打ち切りましたね。その理由を教えてもらえますか?」
私はちょっと口ごもった。理由と言っても、単なる思い過ごしのように今は思えるからだ。
でも、太田さんはやさしく微笑みながら私の答えを待っている。仕方なく、私はありのままを答えた。