君と描く花言葉。
「……ねぇエリカ」
今度は、セイジが私の名前を呼ぶ。
私は少しだけ左を向いて、セイジに視線を合わせた。
あぁ……この顔。
知ってる。見たことあるよ。
この関係の、一番最初。
私の世界を見せてって言ってきたときの、あの子供のようにキラキラした目だ。
「俺、エリカの世界が描いてみたい」
意味は、よくわからなかった。
見える世界でもなく。
自分の世界でもなく。
想像の世界でもなく。
私の世界を、人の世界を描く?
どうやって?
「うん」
それでも、なんだかセイジならできる気がした。
だから、笑顔で。
「描いて。私の世界!」
私の返事にセイジは満足そうな顔をして、それから、スッと手を差し出す。
「行こう。アトリエに」
「うん!」
繋いだ左手は暖かくて。
あぁ、やっぱりセイジは生きてるんだなぁ、って。そう思った。
木造の廊下をキシキシ言わせる2人分の足音は、アトリエに吸い込まれて消える。
なんだか、ものすごい満足感だ。